3Dfinditがロボットアーム再利用の鍵となるまで

多くの産業施設では、旧式のロボットアームが休眠状態で放置されています。現代の生産ワークフローにはもはや対応していないものの、機械的にはまだ十分に機能します。近年では、これらのロボットを持続可能性や資源の有効活用の観点から、再び実用化しようとする研究が進んでいます。
リュブリャナ大学のミルコ・ソコヴィッチ(Mirko Sokovic)氏が率いた最近の研究プロジェクトは、その好例です。研究チームは、旧式の産業用ロボットに最新のハンドヘルド型3Dスキャナーを搭載し、自動で精密な3Dスキャンができる「光学的品質検査システム」へと変貌させました。
多関節ロボットアームは、プログラミング、制御システム、センサー技術を学ぶ学生の実習に役立ち、学習効果を高めます。(ミルコ・ソコヴィッチ氏、他)
古いハードウェアに宿る新たな可能性
対象となったロボットアーム(三菱製 RV-3SDB-S15)は、もともと精密な測定作業や高性能なセンサーの搭載を想定して設計されたものではありません。一方、Shining 3D社のEinScan Pro 2Xのようなハンドヘルドスキャナーは、手動操作を前提としており、ロボットへの取り付けには対応していません。最大の課題は、これら2つの異なる技術を物理的に接続する「既製の手段」が存在しない点でした。
また、近年の学術・応用研究は、限られた予算、短い開発期間、高い柔軟性が求められる環境に置かれており、既存の機器や技術を「捨てる」のではなく、「賢く再活用する」姿勢が重要です。
技術の“ミスマッチ”を乗り越える工夫
スキャナーとロボットを接続するためには、構造的に安定し、形状的に正確で、かつ低コストで製造できる機械的インターフェースが必要でした。市販のグリッパーは形状の互換性がなく、この用途に適していませんでした。一方で、一から専用パーツを設計・製作するには、時間と資源がかかります。
そこで、研究チームが選んだのは次のアプローチです。
- コンポーネントの3Dデジタル化(写真測量)
- 形状のリバースエンジニアリング
- SolidWorksによる3D CADモデリング
- FDM方式の3Dプリントによる造形
これらを組み合わせて、スキャナーとロボットをつなぐ専用のアダプターを設計・製作しました。
3Dfinditの活用:一から作るのではなく「見つけて活かす」
ここで、3Dfinditが重要な役割を果たしました。研究チームは、ゼロから設計する代わりに、3Dfinditで既存のグリッパーのCADモデルを検索・フィルタリングしてダウンロード。それをベースに、スキャナーの形状に合わせてカスタマイズし、3Dプリント用に調整しました。これにより、時間とエンジニアリングコストの大幅な削減が可能になりました。
3Dfinditは、既存製品の検索時間を短縮するだけでなく、既存部品の改良や迅速な適応にも非常に役立つエンジニアリングツールです。検索方法は多様で、さまざまなファイル形式に対応したモデルが無料でダウンロードできます。また、作成した修正モデルをデータベースに保存し、他のユーザーと共有できる点も大きな利点です。(ミルコ・ソコヴィッチ氏、他)
検索時のフィルター機能(キーワード、形状、ファイル形式)やSolidWorks形式の対応が成功の鍵となりました。設計の検証後、研究チームはカスタマイズしたモデルを3Dfinditにアップロードし、コミュニティと共有しています。
動作するプロトタイプと再現可能なプロセス
最終的に、以下のような完全動作のプロトタイプが完成しました。
- ハンドヘルド3Dスキャナーをロボットアームに安全に固定
- カスタマイズしたグリッパーをPLA素材でFDM方式にて3Dプリント
- スキャンから組立まで、最小限のリソースで開発を完了
この成功は単なる技術面にとどまりません。デジタルツールとオープンデータを活用すれば、柔軟で持続可能、かつ低コストな研究開発が可能であることを示しています。特に大学や研究所、スタートアップにとっては、既存ハードウェアの再活用や共有ライブラリの活用が、従来の高コストな開発に代わる、賢くて拡張性の高い選択肢となりつつあります。
現代の研究開発エコシステムにおける3Dfinditの役割
今回のプロジェクトでは、3Dfinditが検証済みで編集可能なCADモデルへのアクセスを提供したことで、アイデアから実機プロトタイプへの迅速な移行が実現しました。現代のR&Dにおいては、エンジニアリングの敏捷性が極めて重要です。そして、3Dfinditはその俊敏性を支える「デジタルツールボックス」として機能しています。
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